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ひょっとこの由来とは?名前の説、竈の神、踊りとおかめとの関係

ひょっとこの名前の由来として最も広く知られているのは、「火男(ひおとこ)」がなまったという説です。口をとがらせた顔を、竈(かまど)の火を吹いて起こす男の顔つきに見立てた呼び名で、主な国語辞典もこの説で説明しています。ただ、別の語源説もあり、由来は一つに決まっていません。

ひょっとこは、口を極端にとがらせ、片方の目を小さくした滑稽な男の面です。その面を着けて里神楽で道化を演じる役も、同じくひょっとこと呼びます。辞典には「馬鹿面」「潮吹き」といった別名も載っています。

名前の説を確かめていくと、東北に残る竈の神の面、神楽の道化役、各地のひょっとこ踊り、そして相方のおかめへと話がつながっていきます。順にたどってみます。

ひょっとこの名前の由来には、どんな説があるのか

まず、辞典の説明を並べてみます。デジタル大辞泉は「ひおとこ(火男)」の音変化とし、精選版日本国語大辞典は、火を吹くときの顔つきから出た語だと説明しています。口をすぼめて竹筒に息を送る姿が、あの面の形に重ねられたわけです。

火男という言葉そのものについても、見方が一つではありません。日本大百科全書(ニッポニカ)は、東北地方の竈神である「火男」に由来すると書いています。世界大百科事典は、火焚き男が竈神になったという起源譚に触れたうえで、ひょっとこが鍛冶の神の系譜を引く存在だという見方も示しています。

火男説とは別に、「非徳利(ひとっくり)」が転じたという説もあります。目の大きさが不釣り合いで、口が徳利のような形をしているから、という理屈です。ただしこの説は、紹介している語源辞典自身が無理があると評しており、有力な説とは言えません。

説 内容 扱い
火男(ひおとこ)説 竈の火を吹く男の顔つきから。「ひおとこ」が「ひょっとこ」に変化した 主な辞典が採る説
竈神の火男説 東北の竈神の「火男」、火焚き男が竈神になった話に由来する 百科事典が紹介
非徳利(ひとっくり)説 不釣り合いな目と徳利のような口から 異説として紹介される程度

竈の神の面「カマ神」とひょっとこの関係

火男説を考えるうえで外せないのが、宮城県から岩手県南部にかけて見られる「カマ神」の風習です。カマガミサマ、カマズンツァン、カマオトコなどと呼ばれる土製や木製の面を、台所の柱や竈の上に、出入口や外をにらむように掛けておきます。

宮城県の文化財解説によれば、この面は火難よけ、魔よけ、家内繁盛のためのものです。家を新築して竈を新しくした際、火の神を祀る意味で、家を造った材料の一部を使って大工や左官に作ってもらうことが多くありました。風習はすでにすたれ、古い民家にわずかに残るのみです。

カマ神の面は、多くが憤怒の形相をしています。口をとがらせたひょっとこの面とは、顔つきがまるで違います。両者をつなぐのは面の形ではなく、竈の神の起源を語る昔話です。

それでも百科事典は、この竈の面をひょっとこの項目で扱っています。世界大百科事典は、陸前地方(現在の宮城県の大部分)で竈の側に面を掲げて祀る風習があると記しています。マイペディアも、東北地方では土製の面を竈の上に掛けて「竈神様」と呼ぶことを、ひょっとこの説明の中で紹介しています。

民俗学者の佐々木喜善がまとめた『江刺郡昔話』には、竈神の起源譚が「ひょっとこの始まり」という題で載っています。宮城県と岩手県南部では、火焚きの男が竈の神になったという話の主人公を「ひょうとく」「ひょっとこ」と呼び、宮城県内の別の土地ではショウトク、ショウドグといった名前で伝わっています。火を扱う男と竈の神、そしてひょっとこという名前は、この地域の昔話の中で一続きになっています。

神楽の道化役としてのひょっとこ

ひょっとこが人前で演じられる場は、まず里神楽です。百科事典マイペディアは、ひょっとこは正しくは「もどき」と呼ばれる役で、お亀(おかめ)とともに道化役を務めると説明しています。

世界大百科事典によると、ひょっとこはお亀とともに、神楽の種まきや魚釣りの舞に登場します。日本大百科全書は、おかめやだるまなどと組んで、間の狂言の役を演じると書いています。神々の舞の合間に、とぼけた所作で場をほぐすのがひょっとこの持ち場です。

ひょっとこ踊りの由来

ひょっとこの面を着けて踊る芸能は各地にあり、なかでもよく知られているのが宮崎県日向市のひょっとこ踊りです。祭りの公式サイトによれば、明治時代に日向市塩見永田地区で眼科医を開業していた橘公行医師が考案したと伝わります。踊りのルーツは、里神楽に登場する「もどき」をモデルにしていることがわかってきました。

永田に伝わる話では、「ひょう助」と「おかめ」の夫婦が稲荷神社に子宝を願います。ところが神主が供え物を食べてしまい、怒ったお稲荷様が狐の姿で現れます。狐はおかめに惹かれて踊りだし、おかめとひょう助、村の若者たちもつられて踊り、最後に一人の青年が竹ぼうきで踊りながら場を掃き清めます。

永田のひょっとこ踊りは日向市の無形民俗文化財に指定されています。いま毎年夏に開かれる日向ひょっとこ夏祭りは、地域の活性化と伝統の継承を目的に1984年に始まりました。

おかめとひょっとこ
おかめとひょっとこ。写真: @yb_woodstock from Moriya, Ibaraki, JAPAN, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

おかめとひょっとこが一対で扱われる理由

おかめは、下膨れの丸い頬をした女の面で、お多福とも呼ばれます。この呼び名にも複数の説があります。辞書『大言海』は「お多福」を、若い女を指す「乙御前(おとごぜ)」と、あご(頤)の膨れた様子から説明しています。「お亀」については、室町時代末のある神社の巫女、亀女の名が出所だという説があります。また、おかめを天鈿女命(あめのうずめのみこと)の面とすることもあります。

ひょっとことおかめが並ぶ理由は、舞台での役割から説明できます。江戸系の里神楽では、おかめはひょっとこやだるまといった「もどき」の男役と対になって、軽妙な脱線や滑稽を演じます。そして最後には、たしなめ役に回ることが多いとされています。ふざける男と、それをいさめる女という組み合わせです。

日向の踊りでも、ひょう助とおかめは夫婦として登場します。神楽の対の役と踊りの夫婦、どちらの場でも、二つの面は一組で使われてきました。

よくある質問

ひょっとこは漢字で「火男」と書くのですか?

「火男」と書いて「ひょっとこ」と読ませることがあります。主な国語辞典が、ひょっとこを「ひおとこ(火男)」の変化した語と説明しているためです。ただし非徳利説のような異説もあり、語源が確定しているわけではありません。

ひょっとこは神様ですか?

神楽のひょっとこは、神ではなく道化の役です。一方、宮城県から岩手県南部には、火焚きの男が竈の神になったという昔話があり、その主人公が「ひょうとく」「ひょっとこ」と呼ばれています。場面によって、道化にも神の起源譚の主人公にもなる存在です。

ひょっとこの面は、どんな場面で使われてきましたか?

代表的なのは里神楽で、おかめと組んで道化を演じる役の面として使われてきました。宮崎県日向市などのひょっとこ踊りでも、踊り手がこの面を着けます。また東北では、竈の神の起源を語る昔話に、ひょっとこという名前が登場します。

ひょっとこ踊りの発祥はどこですか?

ひょっとこの面を着けた踊りは各地にあり、一か所に絞ることはできません。広く知られる宮崎県日向市のひょっとこ踊りは、明治時代に塩見永田地区で考案されたと伝わり、市の無形民俗文化財に指定されています。

おかめとお多福は同じものですか?

同じ女の面を指す呼び名として使われています。ただし語源の説明は別々で、お多福は「乙御前」と頬の膨れた様子から、お亀は巫女の名から来たという説があります。

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参考にした資料