狐面は、面を自分の顔に合わせて着けるものではありません。顔のほうを面に合わせて着けます。額と顎の2点で面を支え、顔とのすき間は内側に貼ったスポンジで埋め、紐はその2点に面を押さえておくだけにします。これが、ずれにくく痛くなりにくい着け方の基本です。
そのうえで、狐面には、顔にまっすぐ着ける、頭の横に掛ける、頭の斜め上に掛ける、首から下げる、という付け方があります。浴衣で祭りを歩くなら、前が見えたまま狐の顔を見せられる、頭の横か斜め上がいちばん扱いやすい位置です。
面は、着ける人の顔に合わせて作られていない
最初に知っておいてほしいのは、面は一人ひとりの顔の大きさに合わせて作られていない、ということです。演劇の世界では、面を着けることを「顔を面に合わせる」と言います。面が顔に寄ってくるのではなく、着ける側が面に合わせていく、という考え方です。
狐面や仮装用の面は、人の顔に多少は合うように作られています。それでも、顔の幅や鼻の高さ、目と目の間隔は人によって違うので、誰の顔にもぴったり合う面はありません。能面にいたっては、そもそも人間の顔の大きさでは作られていません。
ところが、多くの人は面を眼鏡のように考えて、目の穴を自分の目に合わせ、紐をきつく締めて顔に密着させようとします。よくあるのは次のような着け方です。
- 紐をきつく締めて留める:面が顔に押し付けられ、鼻や頬の一点に力が集まって痛くなります。締めても、面と顔の形が違う以上、すき間は消えません。
- 鼻で面を支える:面の重さが鼻の一点にかかり、長く着けるほどつらくなります。面が鼻を支点に揺れるので、かえってずれます。
- 目の穴に合わせて面の位置を決める:目の穴を優先すると、額や顎が面の内側に当たらない位置で止まり、面が浮いたまま紐だけで吊られることになります。
面の位置は、目の穴ではなく、額と顎という支える場所で決めます。

額と顎の2点で支える:顔に着けるときの手順
顔全体を覆う狐面は、面の内側の上の方を額に、下の方を顎に当てて支えます。鼻や頬は面に押し付けず、面との間に少しすき間が残るのが正しい状態です。紐の役目は、この2点に面を押さえておくことだけです。
- 髪をまとめるなら、先にまとめておきます。面を着けてから髪を直すと、紐がずれます。
- 面を顔に当て、面の内側の上の方が額に、下の方が顎に触れる位置を探します。鼻の頭が面の内側を押していないか確かめます。
- 額と顎のどちらかが浮くときは、浮いている側の内側にスポンジを貼って当たりを作ります(次の節)。
- 片手で面を押さえたまま、紐を耳の上に通して頭の後ろへ回します。
- 後頭部のいちばん出っ張ったところの、少し上で結びます。ここより下で結ぶと、面が下を向いてずり落ちやすくなります。締める強さは、額と顎が面から離れない程度で十分です。
- 首を左右に振り、額と顎の当たりが動かないか確かめます。動くなら、紐をきつくするのではなく、スポンジで当たりを足します。
目の穴が自分の目と少しずれていても、慌てて面を動かす必要はありません。スポンジの厚みで面の高さや顔からの距離を調整すれば、目の穴の位置も一緒に動きます。それでも見えにくい面は、歩き回るときには頭の横へ回しておきます。
顔の上半分だけを覆う半面は、顎まで届きません。額で支え、鼻の付け根に重さが集まらないよう、内側の鼻の当たる部分に薄いスポンジを足します。口元が出ているので、着けたまま飲み物を飲めるのも半面の利点です。
すき間はスポンジで埋める
面と顔の形の違いは、紐の締め具合ではなく、内側に貼るスポンジやウレタンで埋めます。貼る場所は、面を支える額と顎の当たる位置です。
- 額:面が下がって目の穴が低くなるときや、額が面に直接当たって痛むときに足します。
- 顎:顎が面に届かず、面の下側が前に浮くときに足します。
- 厚み:薄いものから試し、足りなければ重ねます。厚くしすぎると面が顔から離れて、横から見たときに浮いて見えます。
スポンジは、面の内側に直接貼るより、はがせる両面テープで留めておくと、別の人が着けるときに付け替えられます。汗をかいた日は、外したあとに内側を乾いた布で拭き、風通しのよい場所で乾かしてからしまいます。
外すときは、紐をほどいてから面の縁を持って外します。紐を結んだまま引き抜くと、紐穴のまわりに力がかかって面が傷みます。能では、汗が面の表に垂れないように、面を上向きにして外します。


付け方ごとの見え方の違い
同じ狐面でも、どこに着けるかで見え方と使い勝手が変わります。

| 付け方 | 見え方 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 顔にまっすぐ着ける | 顔全体が狐になり、変身した印象がいちばん強い | 写真撮影、仮装、行列など短い時間 | 視界が狭くなる。人混みや階段では外す |
| 頭の横に掛ける | 横顔の隣に狐の顔が並び、素顔も見える | 祭りの散策、浴衣 | 面の縁が耳に当たりやすい |
| 頭の斜め上に掛ける | 狐が斜め上を向き、動きが出る | 写真、髪をまとめた日 | 重い面は前に傾きやすい |
| 首から下げる | 胸元や背中に面がくる | 着けたり外したりが多い日 | 紐が首に食い込まない長さにする |
能の世界では、面を着けることを「かける」とも言います。頭の横に掛ける付け方も、面が顔の正面にないだけで、紐で頭に留める仕組みは顔に着けるときと変わりません。
頭の横や斜め上に掛けるときの手順
祭りの写真でよく見る、横顔の隣に狐の顔がのぞく付け方です。面は顔と同じくらいの大きさがあるので、頭の横に掛けると、耳の上から頬の横まで面が覆う形になります。
- 紐を結ぶ前に、面を置く側を決めます。髪飾りをつける側の反対にすると、髪飾りと面がぶつかりません。
- 面の内側を頭の横に当て、面の上の方が側頭部に、下の方が耳の後ろあたりに乗る位置を探します。顔に着けるときと同じく、面は2か所で支え、耳は押さないようにします。
- 左右の紐を、一本は額の側、もう一本は後頭部の側に回し、面と反対側のこめかみのあたりで結びます。
- 斜め上にしたいときは、面を頭の上寄りに置き、少し上に傾けてから紐を締めます。狐が空を見上げているような角度になります。
- 最後に、面の縁が耳を押していないか確かめます。当たるなら、当たる手前の内側にスポンジを足して面を浮かせます。
頭の横に掛けた面は、顔に着けたときより支えが少なく、重い面ほど前へ傾きやすくなります。木や厚い張り子の面なら、紐を二組にして上下で支えると安定します。
首から下げるときの注意
着けたり外したりを繰り返す日や、面を着けない時間のほうが長い日は、紐を首に回して胸元や背中に下げておく方法もあります。紐の長さに余裕を持たせ、首に食い込まない位置で結びます。人混みで面や紐が引っかかることもあるので、首から下げるのは、面を持ち歩くあいだの一時的な置き場所と考えておくのが安全です。子どもの場合は、首に紐を回す付け方そのものを避けます。
紐の結び方と選び方
紐は面を締め付けるためのものではなく、支える2点に面を押さえておくためのものです。そのうえで、結び方はほどけにくさと外しやすさの兼ね合いで選びます。
- 蝶結び:すぐにほどけるので、着けたり外したりが多い日に向きます。ゆるみやすいので、長く着けるなら輪の部分をもう一度軽く結んでおきます。
- こま結び(本結び):ほどけにくく、長い時間着ける日に向きます。そのぶん外すときに手間がかかります。
紐そのものも、ずれにくさに関わります。能で使う面紐は絹の組紐で、断面が丸くなるように組んだ丸組みのものが使われ、しっかり結べてゆるみにくいのが特徴です。細くてつるつるした紐やゴムは、結び目が滑りやすいのが弱点です。すぐゆるむときは、太めで表面に凹凸のある組紐に替えるだけでも変わります。
動きの大きい場面では、紐を二組にする手もあります。狂言面の狐のように激しく動く役の面では、面紐を二組使うことがあります。上の紐を後頭部の出っ張りの上、下の紐を首の付け根の少し上で結べば、面は上下どちらにも傾きにくくなります。

浴衣や祭りに合わせるときのコツ
浴衣に合わせるなら、狐面は頭の横か斜め上が収まりのよい位置です。帯や髪飾りと色を一つそろえると、面だけが浮いて見えません。白地に赤い隈取りの狐面なら、赤い帯や髪紐と合わせると全体がまとまります。
夜の祭りでは、白い面は提灯の明かりを受けて写真に明るく写ります。黒い面は暗い背景に沈みやすいので、顔の横など明かりの当たる位置に置くと表情が見えます。
狐に扮すること自体が行事になっている祭りもあります。東京の王子で大晦日に行われる狐の行列では、参加者が狐の面をかぶるか、狐の化粧をして歩きます。こうした場では顔に着けた面が主役になるので、額と顎で支えて後頭部で結び、長く歩くなら紐を二組にしておくと安心です。
よくある質問
狐面の目の穴が、自分の目の位置と合いません。
面は着ける人の顔に合わせて作られていないので、目の穴がぴったり合わないのは普通のことです。面の位置は額と顎で決め、目の穴の高さは内側のスポンジの厚みで調整します。紐を締めて目の穴に合わせようとすると、痛くなり、かえってずれます。
狐面を着けると鼻が痛くなります。
面の重さが鼻にかかっています。額と顎の当たる位置にスポンジを足して、面を鼻から少し浮かせてください。半面の場合は、鼻の付け根の当たる部分に薄いスポンジを足します。
狐面を横に付けるときは、右と左のどちらが正しいですか?
決まりはありません。髪の分け目や髪飾りの位置、一緒に歩く人がいる側を見て、面がぶつからない側を選べば十分です。
子どもに狐面を着けさせるときの注意は?
顔に着けると足元が見えにくくなるので、歩くあいだは頭の横に回しておきます。紐は首に回さず、頭で結ぶ付け方にしてください。

仮面屋おもてで実物を見る
店頭でいちばんよく手に取られるのが狐面です。店頭の面はすべて試着でき、着けたまま写真を撮っていただいても構いません。
- 場所 東京都墨田区京島3-20-5(キラキラ橘商店街)/京成曳舟駅から徒歩(道順)
- 営業 土日のみ 13:00〜18:00
- 通販 遠方の方は国内向けオンラインストアから
