能面の種類一覧:翁、尉、男面、女面、鬼神の代表的な面と役の写真

能面の種類一覧:翁、尉、男面、女面、鬼神の代表的な面と役

能面の種類は、おおまかに翁(おきな)、尉(じょう、老人の面)、男面、女面、鬼神の系統に分けられます。鬼神とは別に、死霊や生霊を表す怨霊(おんりょう)の面を独立させる分け方もあります。名前の付いた面を合わせると200種類を超えますが、基本になる面は約60種類です。

数が多いのは、同じ「若い女性」でも一つの面では済まないからです。年齢、身分、その役が着る装束の色、恋をしているかどうか。能ではそうした違いを、面を取り替えることで表してきました。

ここでは代表的な面に絞り、系統ごとに名前と役を表にまとめます。

能面はいくつの系統に分かれるか

系統の分け方は、資料によって少しずつ違います。能楽協会は翁面、尉面、男面、女面、怨霊面、鬼面に分け、能の解説サイトは翁、尉、女面、男面、鬼神、怨霊の六つを挙げています。大阪の能楽堂の解説のように、男性面、女性面、鬼面という大きな三つに分け、般若を女性面に入れる例もあります。

系統 表すもの 代表的な面
翁面 儀式の曲『翁』に現れる神としての老人 白式尉、黒式尉
尉面 老人の男性。品のある老人から漁師の亡霊まで 小尉、三光尉
男面 少年から壮年の男性 中将、平太、童子
女面 少女から老女までの女性 小面、増女、孫次郎、深井、姥
怨霊面 生霊や死霊 泥眼、般若、痩男
鬼神面 鬼や天狗など人ではないもの 大癋見、顰

どの分け方でも、翁と尉が老人、男面と女面が人間、鬼神と怨霊が人ならぬもの、という大きな筋は変わりません。違いが出るのは、般若のように人から鬼になった役の面をどこに置くかです。

黒式尉(こくしきじょう)
黒式尉(こくしきじょう)。黒い翁の面です。

翁と尉:老人の面

翁面は、能の中でも特別な曲『翁』だけに使う面です。能のもとになった猿楽より古い翁猿楽の面が源流で、顎が口の横で切り離されて紐でつながる「切り顎(きりあご)」という形をしています。この形は、ほかの能面には見られません。

面 特徴 主な役と演目
白式尉(はくしきじょう) 長いあごひげと大きな眉。白色尉とも書く 『翁』の翁
黒式尉(こくしきじょう) 白式尉とよく似た形で、面全体が黒い 『翁』の三番叟(狂言方が演じる)
小尉(こじょう) 頬骨が低く、上品でやさしい顔立ち 『高砂』『老松』などの前シテの老人
三光尉(さんこうじょう) 漁師や木こりなど庶民の老人。口ひげが付く 『八島』『実盛』『善知鳥』などの前シテの老人

「尉」は老人を意味し、尉面には基本的にあごひげと髷(まげ)が付いています。小尉は、一日の番組の最初に演じる脇能(わきのう)で、前半に現れる老人の役に使われます。同じ老人でも、漁師や木こりのような庶民の役になると三光尉に替わります。尉面の中にも、上品な老人と働く老人の区別があるわけです。

小面(こおもて)
小面(こおもて)。若い女性の面です。

女面:小面、増女、孫次郎、深井、姥

女面は、種類がもっとも多い系統です。若い女性の面だけでも何種類もあり、見た目の差は頬の張りや目元の細さといった、わずかな違いです。

面 表す人物 主な演目
小面(こおもて) 若い女性の面のうち最も若い。頬がふっくらして少女のような可愛らしさ 『井筒』『松風』『船弁慶』など
増女(ぞうおんな) 若い女性全般。小面よりやや細く深みのある表情で、天女にも使う 『羽衣』『熊野』『当麻』など
孫次郎(まごじろう) 若い女性。頬が締まり、大人びた色気がある 『松風』『井筒』『野宮』など恋する女性の曲
深井(ふかい) 中年の女性。子を探す母など。若い面より頬がこける 『隅田川』『三井寺』『砧』など
姥(うば) 老いた女性。額や頬に多くの皺 『高砂』など

若い女性と中年の女性を分ける手がかりは、面だけではありません。若い女性の役は紅入(いろいり)と呼ばれる赤系統の色が入った装束を着て、中年の役は赤の入らない紅無(いろなし)を着ます。深井は、この紅無の役に使う面です。

表を見ると、『井筒』が小面にも増女にも孫次郎にも出てきます。一つの曲に使える面は一つに決まっておらず、後で書くように、流儀によって好む面も違います。

男面:中将、平太、童子

男面は、身分や状況によって細かく分かれています。武士の面一つをとっても、戦に勝った武将と、地獄で苦しむ亡霊とでは別の面を使います。

面 表す人物 主な演目
中将(ちゅうじょう) 貴族や平家の公達(きんだち)の霊。在原業平がモデルで、別称の「在五中将」から名が付いた 『清経』『忠度』『融』など
平太(へいだ) 勝ち戦の勇ましい武士 『田村』『八島』『箙』など
童子(どうじ) 不老不死の仙人や少年の霊。三日月形の眉 『石橋』『菊慈童』など
痩男(やせおとこ) 地獄に堕ちて苦しむ男の霊。頬がこけ、目が落ちくぼむ 『善知鳥』『阿漕』『藤戸』など

痩男には、対になる女性の面として痩女(やせおんな)があります。妄執のために地獄に堕ちた女性の役で、『砧』『定家』『求塚』などに使われます。

平太と似た面に、男性の霊などに使う怪士(あやかし)があります。見分けるところは目で、怪士には目に金が入り、平太には入りません。

鬼神の系統の面(左)と、般若(右)鬼神の系統の面(左)と、般若(右)
鬼神の系統の面(左)と、般若(右)。

鬼神と怨霊の面:大癋見、顰、般若

鬼神の面は、能面の中でも古い系譜を持っています。一部は、飛鳥時代から平安時代に大陸から伝わった伎楽や舞楽の仮面の影響を受けています。

面 特徴 主な演目
大癋見(おおべしみ) 口を結び、目鼻が大きい。主に天狗に使う 『鞍馬天狗』『是界』など
顰(しかみ) 口を大きく開けた、危害を加える悪い鬼。名は顔を「しかめる」から 『土蜘蛛』『紅葉狩』『大江山』など
泥眼(でいがん) 嫉妬を抑えようとする女性。目と歯に金泥 『葵上』『砧』など
般若(はんにゃ) 嫉妬による怒りと悲しみで鬼になった女性。金色の角が二本 『葵上』『道成寺』『黒塚』

大癋見の目鼻や口を少し小さくし、皺を減らした小癋見(こべしみ)という面もあり、こちらは神や鬼に使います。般若は、もとは人間の女性だった役の面です。鬼そのものを表す顰とはそこが違い、般若を女面の仲間として扱う資料もあります。

面の数と、流儀による違い

能面の数は、数え方によって大きく変わります。知られている面の名前は約300、面の種類は約250とされますが、基本の約60種類をそろえれば、現在演じられる約240曲のほとんどを上演できます。能の解説サイトは「200種類以上」、大阪の能楽堂は「大きくは20種類、細かく分ければ約200種類」と書いていて、どれも間違いではありません。大きな型で数えるか、細かい変種まで一つずつ数えるかで、数字が変わるのです。

流儀による違いは、特に若い女性の面にはっきり出ます。金春流と喜多流は小面を最も尊重し、宝生流は節木増(ふしきぞう)、観世流は若女(わかおんな)、金剛流は孫次郎を流儀の代表の面としています。同じ曲の同じ役でも、観る舞台の流儀が違えば、別の名前の面が現れることがあります。

京島の店でも能面と狂言面を扱っていて(店頭販売とお取り寄せ)、店頭の面はすべて試着できます。

よくある質問

いちばん有名な能面は何ですか?

小面と般若です。能楽協会は女面の中で最も著名な面として小面を挙げ、博物館の展示解説でも、能面と聞いて小面か般若を思い浮かべる人が多いと紹介されています。

能面は全部で何種類ありますか?

数え方によって違い、名前の付いた面は200種類以上、約250種類とする資料もあります。基本になる面は約60種類です。

女性の能面はどう見分けますか?

頬のふくらみと目元で年齢を見分けます。いちばん若い小面は頬がふっくらしていて、孫次郎は頬が締まって大人びています。中年の深井は頬がこけ、老女の姥には額や頬に皺が描かれています。

能面と狂言面は違うものですか?

違います。狂言にも独自の面があり、乙(おと)、武悪(ぶあく)、賢徳(けんとく)、嘯吹(うそぶき)などがあります。能の『翁』で狂言方が着ける黒式尉は、狂言面として数えられることもあります。

仮面屋おもての店内

仮面屋おもてで実物を見る

能面・狂言面は店頭での販売とお取り寄せを行っています。詳しくは能面・狂言面の販売・お取り寄せをご覧ください。店頭の面はすべて試着でき、着けたまま写真を撮っていただいても構いません。

  • 場所 東京都墨田区京島3-20-5(キラキラ橘商店街)/京成曳舟駅から徒歩(道順)
  • 営業 土日のみ 13:00〜18:00
  • 通販 遠方の方は国内向けオンラインストアから

参考にした資料