張り子は、風船を型にすれば、粘土や木で型を作らなくても作れます。ふくらませた風船に、糊を付けた新聞紙と白い紙を交互に張り重ね、乾いたら風船を割って抜くだけです。手を動かす時間は2時間ほどで、残りは乾かす時間です。張ってから乾くまでに2〜3日、下地と彩色を入れると1週間前後を見ておきます。
材料は、風船、新聞紙、半紙か習字紙、糊、刷毛、絵の具で、どれも100円ショップでそろいます。糊は台所の小麦粉から煮て作れますし、木工用ボンドを水で薄めても代用できます。
ここで扱うのは、だるまや動物、球体の飾りのように、風船の丸みをそのまま生かす張り子です。お面にするときの切り出し方と目の穴の開け方は「張り子のお面の作り方」の記事に書いたので、この記事では繰り返しません。


張り子はどういう工芸か
張り子は、型に紙を何枚も張り重ね、乾いてから中の型を抜き取って作る細工物です。中が空洞なので、見た目より軽く仕上がります。福島の三春張り子や静岡の浜松張り子のような郷土玩具のほか、青森のねぶたの山車も同じ製法で作られています。
だるまも張り子です。群馬の高崎だるまは、かつては木型に紙を一枚一枚張り、天日で乾かし、背を割って木型を取り出し、切れ目を膠で張り合わせて作っていました。東京の多摩だるまでは、水に浸けた和紙をちぎって木型に貼り込み、乾かしてから厚手の紙を糊で貼り重ね、しっかり乾いたら切れ込みを入れて木型から外します。完成までおおむね7〜10日かかり、秋から冬にかけて乾いた風が吹く気候が産地の条件になったと紹介されています。
職人の張り子と家庭の風船張り子の違いは、型だけです。木型は何度も使えて同じ形を量産できますが、風船は一回限りで、そのかわり抜くのに刃物が要りません。紙を張り重ねて乾かすという工程の中身は変わりません。
用意するものと糊の作り方
- 風船(作りたい大きさにふくらむもの。丸い形のものが扱いやすいです)
- 新聞紙(2日分ほど)
- 白い紙(半紙、習字紙、障子紙など、薄くて水を吸うもの)
- 糊(小麦粉から煮たでんぷん糊、または水で薄めた木工用ボンド)
- 糊を入れる器と刷毛
- 風船を載せる紙コップか小鉢
- はさみ、カッター、針
- 白のアクリル絵の具(下地用)と、彩色用の絵の具、筆
- マスキングテープ(耳や鼻を仮留めするとき)
- 紙粘土(表面をなめらかにしたいとき)
紙は、新聞紙だけでも作れます。白い紙を混ぜるのは、層を数えやすくするためと、最後の層を白くして下地の絵の具を節約するためです。手漉きの和紙を使う工房もありますが、家庭では半紙で十分です。
糊は、昔からでんぷん糊です。博多張子では小麦粉糊、多摩だるまでは中力粉を水に溶いて煮たものを使っています。家庭でも同じものを作れます。
- 小麦粉大さじ2に水200ccを入れ、火にかける前によく混ぜて粉のだまをなくします。
- 鍋に移し、弱火にかけて底からかき混ぜ続けます。沸騰させずに、とろみが出て透き通ってきたら火を止めます。
- 冷ましてから使います。濃すぎたら水を足して、刷毛で塗れる程度に伸ばします。
防腐剤が入っていないので日持ちしません。その日に使い切る量だけ作り、残ったら冷蔵庫に入れて2〜3日のうちに使います。表具や古文書の修理では、小麦でんぷんを4〜5倍の水で、沸騰させないようにとろ火で煮る作り方が伝わっていて、家庭の小麦粉糊も理屈は同じです。
木工用ボンドを使うなら、水で2倍ほどに薄めます。乾くのが早く、乾いたあとの強度も高いのですが、乾いた紙が硬くなるので、刃物で縁を切るときに力が要ります。子どもと作るときは、手に付いても洗い流せるでんぷん糊のほうが扱いやすいです。
風船に紙を張り重ねる手順
- 風船を作りたい大きさにふくらませ、口を固く結びます。結び目側を下にして紙コップや小鉢に載せると、転がらずに作業できます。
- 新聞紙と白い紙を、手で3〜5cm角にちぎります。はさみで切ると縁が厚く残り、ちぎると繊維が毛羽立って段差が消えます。
- 1層目は糊を使わず、水に浸した白い紙を風船に張ります。風船は糊をはじきますが、濡れた紙なら貼りつきます。この層があとで内側の面になり、糊が風船に残らないので外しやすくなります。
- 2層目から糊を使います。紙の片面に刷毛で糊を塗り、前の紙と半分ずつ重なるように張ります。向きを変えながら全面を覆い、一周したら1層です。
- 新聞紙の層と白い紙の層を交互にします。色が交互になるので、どこまで張ったかが一目でわかり、張り残しが出ません。
- 合計で5〜8層張ります。だるまのように立てて飾るものや子どもが手に持つものは8層、軽い吊り飾りなら5層が目安です。
- 最後の層は白い紙で終えます。新聞紙の文字が下地の白に透けにくくなります。
- 風船の結び目の周りは張らずに残します。あとで風船を抜く口になります。直径3〜4cmの穴で十分です。
張っている途中で、全体が湿って風船がしぼむことがあります。糊の水分でゴムが冷えて縮むためです。しぼみ始めたら、張るのを中断して1〜2層ぶん乾かしてから続けます。紙が重なって厚くなった箇所は、乾く前に重なりを破いて取り、穴が空いたところには小さくちぎった紙を張って埋めます。
乾かす日数と、乾き具合の見分け方
2〜3日、風通しのよい場所に置いて乾かします。郷土玩具の工房では太陽と風で乾かす方法が守られていて、ドライヤーやストーブで急いで乾かすと紙が硬くごわごわになると説明されています。家庭でも同じで、日陰か弱い日なたに置いて放っておくのがいちばん失敗がありません。
乾いたかどうかは、色と音と温度で見ます。濡れた新聞紙は灰色がかって見え、乾くと白っぽく戻ります。指で軽く叩いて、鈍い音ではなく乾いた軽い音がすれば乾いています。表面を触って冷たさが残っていれば、中にまだ水分があります。
梅雨時や冬の締め切った部屋では、3日たっても乾きません。扇風機の風を当てるのは問題ありません。熱を加えないので紙が硬くなることもなく、乾く日数を縮められます。
風船を抜いて形を整える
- 完全に乾いたことを確かめてから、結び目の近くに針を刺して風船を割ります。はさみで結び目を切ってもかまいません。
- 割れた風船は内側の紙に張りついていることがあります。口から指かピンセットを入れて、ゆっくり剥がして取り出します。1層目を水だけで張っていれば、たいてい簡単に剥がれます。
- 口の縁をはさみで切りそろえます。だるまのように底を平らにしたいなら、口を少し大きく切って底にします。
- 口を塞ぐときは、新聞紙を丸めて詰めてから、ちぎった紙を糊で2〜3層張って覆います。中におもりを入れる場合は、塞ぐ前に入れます。
- 表面の段差や穴は、ちぎった紙を1枚ずつ張って埋め、もう1日乾かします。
- 内側に湿り気が残っていれば、口を上にして半日置きます。
風船を抜いたあとに形がゆがむのは、乾燥が足りないときです。紙の層が芯まで乾いていれば、風船を抜いても形は保ちます。心配なら、抜く前に一日長く置くほうが、あとから直すより楽です。

だるまや動物にするには
だるまは、風船の口を下にして底を平らに切り、底に小石やビー玉をおもりとして入れてから塞ぎます。高崎だるまも底におもりを付けていて、底を重くするほど倒れても起き上がります。
動物は、耳や鼻、尻尾を別に作って付けます。新聞紙を丸めたりねじったりして形を作り、マスキングテープで本体に仮留めしてから、上からちぎった紙を2〜3層張って一体にします。博多張子の工房でも、型から外した部品を膠で張り合わせ、継ぎ目に和紙で目張りをしています。
白い下地には、職人は貝殻を焼いて粉にした胡粉を膠で溶いて使います。家庭では、白のアクリル絵の具をそのまま下地にして足ります。新聞紙の文字が透けなくなるまで2回塗り、乾いてから色を付けます。
表面の凹凸を消したいときは、水で薄めた紙粘土を薄く塗ってから乾かし、紙やすりをかけます。だるまのような滑らかな面を出したいときに向く方法です。
よくある質問
何層張ればいいですか
5〜8層が目安です。郷土玩具の工程では、博多張子が新聞紙と和紙を2〜3枚、家庭向けの作り方では習字紙を7〜10層と、幅があります。薄い紙ほど層数が要り、厚い紙や新聞紙なら少なくて済みます。迷ったら、乾いたあとに指で押してへこまない厚さを基準にします。
紙が風船に張りつきません
1層目に糊を付けているのが原因です。風船のゴムは糊をはじきます。1層目は糊なしで、水に浸した紙を張ります。濡れた紙はゴムに密着し、乾くと風船の形のまま固まります。2層目からは、この紙の上に糊で張るので問題なく付きます。
ドライヤーで早く乾かしてもいいですか
熱風は避けます。工房がドライヤーやストーブを使わないのは、紙が硬くごわごわになるからです。家庭では、乾燥が片寄って風船を抜いたときにゆがむ原因にもなります。急ぐなら、扇風機かドライヤーの冷風で風だけを当てます。
お面にするにはどうすればいいですか
風船の張り子を半分に切れば、顔のカーブを持った土台になります。ただし風船は顔より丸く、額や鼻の形が出ないので、お面らしい顔にしたいなら粘土で型を作るほうが確実です。切り出す位置、目の穴の開け方、紐の付け方は「張り子のお面の作り方」に書きました。店頭で一番よく手に取られる狐面も、張り子で作れる形の一つです。

仮面屋おもてで実物を見る
日本の面から現代の作家の一点物まで、さまざまな仮面を並べています。店頭の面はすべて試着でき、着けたまま写真を撮っていただいても構いません。
- 場所 東京都墨田区京島3-20-5(キラキラ橘商店街)/京成曳舟駅から徒歩(道順)
- 営業 土日のみ 13:00〜18:00
- 通販 遠方の方は国内向けオンラインストアから
