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仮面の種類一覧 日本と西洋と世界の面を用途で整理する

仮面の種類は、使われる場面で分けると見通しがよくなります。芸能で使う面、祭礼や儀礼で神や精霊になる面、魔除けとして飾る面、娯楽や仮装のための面の四つです。日本の能面も、ベネチアのカーニバルの仮面も、アフリカの儀礼の面も、この四つのどこかに入ります。

百科事典の分類では、仮面は儀礼や呪術のためのもの(死霊の仮面、成人式の仮面、豊猟や豊穣の儀礼の仮面、シャーマンの仮面、悪霊払いの仮面など)と、芸能のためのもの(仮面劇)に大きく分かれます。ここに、飾るための面と現代の娯楽の面を足したのが、下の一覧の軸です。

一覧は日本、西洋、世界の順に表にしました。面ごとの由来や詳しい解説はTOKYO MASK FESTIVALの「世界の仮面図鑑」に項目があるので、ここでは種類の見取り図に徹します。

狐面(左)と般若(右)狐面(左)と般若(右)
狐面(左)と般若(右)。狐は神楽面にも縁日のお面にも入り、般若は能面の鬼神の系統です。

日本の仮面の種類一覧

種類 時代 用途 代表的な面
伎楽面 7〜8世紀 芸能(伎楽という音楽劇) 迦楼羅など
舞楽面 平安中期〜鎌倉が全盛 芸能(舞楽) 蘭陵王、抜頭、二ノ舞、納曽利
行道面 11〜12世紀に形式が整う 儀礼(法会の行列) 菩薩、八部衆、十二天、獅子
追儺面 鎌倉時代の例が残る 儀礼と魔除け(鬼追い) 毘沙門天、鬼
能面 室町〜江戸 芸能(能) 翁、小面、般若
狂言面 室町〜江戸 芸能(狂言) 乙、武悪、賢徳、猿や狐の動物面
神楽面 各地の里神楽 祭礼(神楽) 男神、女神、翁、天狗、おかめ、ひょっとこ、狐
来訪神の面 年の節目の行事 祭礼(来訪神行事) 男鹿のナマハゲ、甑島のトシドン、悪石島のボゼ
縁日のお面 大正〜昭和はセルロイド、現在はプラスチック 娯楽 キャラクター面、狐、ひょっとこ、おかめ

日本の仮面を時代順に並べると、芸能の面から始まり、儀礼の面を経て、ふたたび芸能の面へ戻る流れになります。最も古い伎楽面は、飛鳥時代に大陸から伝わった音楽劇に使われた面で、正倉院の百数十面をはじめ各社寺に合計230余りが残っています。伎楽は鎌倉時代には途絶えていたので、面だけが残った芸能です。

舞楽面は、伎楽面より小さく能面より大きい面で、象徴的で非写実的な表情を持ち、木製で極彩色のものが大部分です。平安から鎌倉時代の作者は、大部分が仏師でした。行道面は寺院の法会で仏像や宝物を奉じて練り歩くときの面で、奈良の当麻寺の来迎会では25の菩薩面が使われます。

能面は役柄や男女や年齢で類型化された数十種類の面で、翁、尉、男、女、鬼神や怨霊の系統に分かれます。狂言は素顔で演じるのが基本で、老人、醜女、神仏、鬼、動植物の役に面を使い、顔の特徴を誇張した人間味のある面が多いのが特徴です。能面の系統と代表的な面は「能面の種類一覧」に表があります。

神楽面は、宮中の御神楽では用いられず、地方の里神楽で使われる面です。男神や女神や翁や天狗の面、おかめやひょっとこや大黒の道化面、狐や猿の動物面があり、木製のほかに紙製もあります。狐の面は神楽面にも縁日のお面にも入っていて、店の棚でもいちばん多く手に取られるのが狐面です。

来訪神の面は、年の節目に仮面や仮装の神が家々を訪れる行事で使われます。男鹿のナマハゲなど10件の行事が「来訪神:仮面・仮装の神々」として2018年11月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。来訪神は悪い心を戒め、災いを祓い、豊作や豊漁をもたらす存在です。

縁日のお面は、大正初期から昭和40年代にかけて葛飾区などで盛んに作られたセルロイド製の面に始まります。セルロイドは熱で容易に形を変えられ、彩色しやすく、大量生産ができました。現在の屋台の面はプラスチックですが、娯楽の面という性格はそのまま続いています。

同じ「鬼」でも系統が違う

一覧を用途で分けた理由は、同じ名前の面が複数の系統にまたがるからです。鬼が分かりやすい例です。追儺面の鬼は、寺の鬼追いの儀礼で追い払われる側の面で、鎌倉時代の毘沙門天の面が鬼追いに使われた例が京都の博物館で展示されています。能面の般若は女性の怨霊で、鬼神の系統に入ります。狂言面の武悪は鬼の面ですが、滑稽化されて笑いを誘います。

男鹿のナマハゲは、見た目は鬼でも来訪神であって、追い払われる鬼ではありません。同じ「鬼の面」を探しても、節分に豆をぶつけたいのか、舞台で使いたいのか、家に飾りたいのかで、見るべき系統が変わります。鬼の面の場面ごとの意味は「鬼のお面の意味とは?」に書いています。

コンメディア・デッラルテの系統の面(左)と、ベネチアのカーニバルの仮面(右)コンメディア・デッラルテの系統の面(左)と、ベネチアのカーニバルの仮面(右)
コンメディア・デッラルテの系統の面(左)と、レースや飾りを付けたベネチアのカーニバルの仮面(右)。

西洋の仮面の種類

種類 時代と場所 用途 代表的な面
古代ギリシャ劇の仮面 紀元前5世紀ごろ 芸能(演劇) 悲劇と喜劇の面
コンメディア・デッラルテ 16世紀〜、イタリア 芸能(即興喜劇) アルレッキーノ、パンタローネ、ドットーレ
ベネチアのカーニバルの仮面 12世紀〜、ベネチア 娯楽と仮装 バウタ、モレッタ、ヴォルト、メディコ・デッラ・ペステ、コロンビーナ
仮面舞踏会の仮面 日本では明治20年ごろの鹿鳴館から 娯楽と社交 目元を覆う面

西洋の仮面は、演劇の面と仮装の面が主役です。古代ギリシャ劇では紀元前5世紀ごろに演劇用の仮面が使われ、ルネサンス期のイタリアでは、職業俳優による仮面即興喜劇コンメディア・デッラルテが生まれました。役柄を示す仮面と衣装を着けた俳優が演じ、ベネチア生まれのけちな老商人パンタローネ、ボローニャ生まれの学者ドットーレ、愚かで殴られ役の召使いアルレッキーノといった定型の登場人物を、仮面(マスケラ)で見分けられるようにしたのです。

ベネチアの仮面は12世紀にさかのぼり、儀式や市民の式典で身分を隠すために使われました。16世紀には一年の大半で仮面を着ける習慣が広がり、18世紀には犯罪や腐敗への懸念から、カーニバル以外の場面での着用が共和国によって禁じられています。白い全面の面に黒いマントと三角帽を合わせるバウタ、高位の女性が着けた小さな楕円形のモレッタ、金箔やレースで飾った「顔」の面ヴォルト、香草を詰めた長いくちばしのペスト医師の面、目元だけを覆うコロンビーナが代表です。

仮面舞踏会は、参加者が仮面を着けたり仮装したりして出席する舞踏会で、日本では明治20年(1887年)ごろに鹿鳴館で初めて行われました。コンメディア・デッラルテは「演じるための面」、カーニバルと仮面舞踏会は「正体を隠すための面」で、同じ西洋の仮面でも向きが反対です。

世界の仮面の種類

地域 代表的な面 用途
アフリカ ドゴンの仮面、ポロ結社の仮面、ボボの羚羊面 儀礼(農耕儀礼、成人式、葬儀)
北アメリカ プエブロのカチナ仮面、クワキウトルの仮面 儀礼(神話と結びついた祭祀)
中南米 ボリビアのディアブラーダの悪魔の面、メキシコのタスチュアンの面 祭礼(カーニバル、聖人の祭り)
アジア 韓国のタルチュムの面、バリ島のトペンの面、チベットの儀礼の面 芸能と儀礼

アフリカの仮面は、力強い造形の木彫りで知られ、ドゴンの仮面やポロ結社の仮面のように秘密結社と結びついたものがあります。ブルキナファソのボボの人々の羚羊の面は、農耕儀礼、通過儀礼、葬儀に用いられる木製の面で、長い角と額から口先へ湾曲した形に幾何学模様が描かれています。

アメリカ大陸では、北米のクワキウトルの仮面やプエブロのカチナ仮面のように、神話と儀礼に根ざした面が発達しました。中南米の面には、ヨーロッパの信仰と土着の信仰が重なっています。ボリビアのオルロのカーニバルでは、派手な仮面を着けた悪魔の踊り手が街を行進します。悪魔はスペイン人が持ち込んだキリスト教の七つの大罪の象徴ですが、その奥にアンデスの古い信仰があるとも考えられています。メキシコのサカテカス州周辺の聖ヤコブ祭では、木彫りの面に牛の毛を縫い付けたタスチュアンの踊り手が、スペイン人と先住民の戦いを再現します。

アジアでは、韓国の仮面劇タルチュムが2022年11月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。河回別神クッタルノリは木の面を使い、鳳山タルチュムは粘土の型に韓紙を貼り重ねて作った面を使い、どちらも支配層への風刺を含みます。バリ島には仮面舞踊劇トペンがあり、日本の国立民族学博物館が研究公演を行っています。チベットやインドには、宇宙論的な意味を負った仮面があります。

一覧をどう使うか

自分の目的から逆に引くと、見る系統が決まります。

  • 家に飾りたい:魔除けの面を見ます。島根県では神楽の面を玄関に飾る家が多く、県の古代文化センターの学芸員は、面を飾る風習は日本各地にあるが、神楽の面を玄関に飾るのは島根県独自と考えられると説明しています。般若、天狗、狐、鍾馗がよく飾られる面です。
  • 着けて踊りたい、舞台で使いたい:芸能と祭礼の面を見ます。能面と狂言面は舞台用、神楽面は祭礼用で、神楽面には木製のほか紙製もあります。
  • 仮装したい、写真を撮りたい:娯楽の面を見ます。ベネチアの仮面や縁日のお面がこの系統です。

一覧は入口にすぎません。たとえば狐の面一つを取っても、稲荷の神楽の面、縁日の面、現代の作家の面で作りも用途も違います。面の名前を一つ決めたら、その面の項目を「世界の仮面図鑑」で読んでから選ぶのが、遠回りに見えていちばん確かです。

よくある質問

日本でいちばん古い仮面は何ですか?

現存する仮面では、7〜8世紀の伎楽面です。東京国立博物館の法隆寺宝物館に31面があり、その半数以上が7世紀にさかのぼると考えられています。百科事典によれば、それ以前に原始時代の土製仮面がありました。

能面と神楽面は何が違いますか?

使う場と作りが違います。能面は能という舞台芸能のための面で、役柄で類型化された数十種類があり、木を彫って彩色します。神楽面は地方の里神楽のための面で、神や翁や天狗のほかに、おかめやひょっとこの道化面、狐や猿の動物面があり、木製のほか紙製もあります。

ベネチアの仮面でいちばん一般的なのはどれですか?

バウタです。白い全面の面で、黒いマントと三角帽と組み合わせ、顔を見せない市民の変装に使われました。女性用のモレッタ、装飾の多いヴォルト、目元だけのコロンビーナが続きます。

世界の仮面はなぜ儀礼と結びついているのですか?

百科事典の分類が示すとおり、仮面の用途の多くは死者の霊、成人式、豊作の祈り、悪霊払いといった儀礼です。アフリカのボボの羚羊面は農耕儀礼と通過儀礼と葬儀に使われ、日本の来訪神の面は災いを祓い豊作をもたらす神の姿です。面を着けることで、人が神や精霊や死者の役を引き受けるという考え方が、地域を越えて共通しています。

仮面屋おもての店内

仮面屋おもてで実物を見る

日本の面から現代の作家の一点物まで、さまざまな仮面を並べています。店頭の面はすべて試着でき、着けたまま写真を撮っていただいても構いません。

  • 場所 東京都墨田区京島3-20-5(キラキラ橘商店街)/京成曳舟駅から徒歩(道順)
  • 営業 土日のみ 13:00〜18:00
  • 通販 遠方の方は国内向けオンラインストアから

参考にした資料