大人用のお面の選び方|顔に合う寸法の目安と、面に顔を合わせる考え方の写真

大人用のお面の選び方|顔に合う寸法の目安と、面に顔を合わせる考え方

大人の顔全体を覆うお面を選ぶなら、縦は20cm前後、横は15cm前後が目安です。お祭りの屋台で売られている面は、子どもがかぶる前提の寸法で作られているものが多く、大人が正面にかぶると顎が出て、目の穴も合いません。

ただ、寸法だけ合わせても、着け心地は決まりません。面は、着ける人の顔に合わせて作られていないからです。顔のほうを面に合わせ、額と顎の2点で支えて、すき間はスポンジで埋める。この考え方があれば、少し大きい面も少し小さい面も、大人の顔で使えるようになります。

目安の数字は、公的な頭部寸法のデータと、博物館に残る面の実測値から出せます。そのうえで、寸法の差を吸収する着け方と、紐や額当ての調整まで押さえておけば、大人の面選びで迷うところは残りません。

大人の顔は、実際にどのくらいの大きさか

目安を出す前に、大人の顔の寸法そのものを確かめておきたいところです。産業技術総合研究所が公開している「日本人頭部寸法データベース2001」には、18〜34歳の青年層と60歳以上の高齢層、合わせて300人あまりの頭部の計測値が載っています。面を選ぶときに関係する項目を、青年層の男女の平均値で抜き出すと次のようになります。

計測項目 何を測ったか 男性(青年) 女性(青年)
全頭高 顎の先から頭のてっぺんまで 約23.2cm 約21.8cm
形態学顔高 目と目の間の鼻の付け根から顎の先まで 約12.1cm 約11.4cm
頬弓幅 左右の頬骨のいちばん張った部分の幅 約14.5cm 約13.8cm
頭幅 頭のいちばん広いところの幅 約16.1cm 約15.3cm
瞳孔間幅 右の瞳と左の瞳の中心の間隔 約6.4cm 約6.2cm

ここで注意したいのは、「顔の長さ」としてよく引かれる全頭高が、頭のてっぺんまで含んだ数字だということです。面が覆うのは、髪の生え際のあたりから顎の先までです。鼻の付け根から顎までが約12cm、その上に額が乗るので、面が覆うべき長さはおよそ18〜20cmになります。幅は頬骨の幅が14cm前後、こめかみから耳の手前までを含めると15〜16cmです。

瞳の間隔は、男女とも6cm強です。眼鏡店の説明でも、日本人の成人の平均は男性64mm、女性60mm前後で、子どもは成長とともに変わるとされています。面の目の穴の間隔がここから大きく外れていると、面の位置をどう動かしても片目しか見えません。

絵付け前の無地の狐面。全面(左)と半面(右)絵付け前の無地の狐面。全面(左)と半面(右)
顔全体を覆う全面の狐面(左)と、目元から上を覆う半面(右)。どちらも絵付け前の無地の面です。縦横の目安が要るのは、左の全面のほうです。

大人用の目安は、縦18〜22cm、横15〜17cm

顔の寸法が分かれば、面に必要な大きさも決まります。顔全体を覆う面なら、縦18〜22cm、横15〜17cmが大人の目安です。縦が18cmを切ると顎が面の下から出て、横が15cmを切ると面の縁が頬骨の上に乗って、横顔に素顔がのぞきます。

この目安が妥当かどうかは、実際に人が着けてきた面の実測値と比べると分かります。博物館が公開している面の寸法を、イベント用品店が公開している現代の面の寸法と並べてみます。

面 縦×横 備考
能面「小面」(東京国立博物館蔵・江戸時代) 21.2×13.9cm 若い女性の面。能面は顔より少し小さく作る
能面「般若」(東京国立博物館蔵・江戸時代) 24.8×17.5cm 角と大きく裂けた口の分、縦長になる
追儺面「鬼」(東京国立博物館蔵・鎌倉時代) 22.1×23.6cm 鬼追いの行事に使う面。横幅が広い
イベント用品店の狐面(樹脂製) 21.5〜24×14〜15cm 縦は足りるが横がやや狭い
イベント用品店の赤鬼・青鬼(樹脂製) 18.5〜19×15.5〜16cm 店の説明に「大人が正面でかぶるにはやや小さめ」とある

能面の「小面」は縦21cm、横14cmです。顔より少し小さく、顎が少しはみ出して見えるくらいが良いとされているので、人の顔の寸法とほぼ重なります。一方、横幅23cmを超える鬼の面は、顔を覆うというより顔の前に構える大きさです。面の大きさは、何を演じるかで決まってきたのであって、着ける人の顔から決まったのではありません。

樹脂製の狐面は、縦22cm前後と大人の顔に足りる長さがありますが、横は14〜15cmで、頬骨の幅ぎりぎりです。鬼の面になると縦19cm弱で、販売店自身が大人には小さめだと注記しています。縦横の数字を見るときは、縦だけでなく横も確かめてください。

大人の顔に合う面の大きさを示す図。縦、横、瞳の間隔の矢印
大人用の面は、顔より一回り大きいものを選びます。縦は額から顎の下まで、横は頬のいちばん広いところ、そして瞳の間隔が目安です(数値は本文)

屋台のお面が大人に小さい理由

では、お祭りの屋台の面は、なぜ大人に合わないのでしょうか。意図的に小さく作っているわけではなく、買う人が子どもだからです。縁日の面を80年近く卸してきた問屋の説明では、アニメや戦隊もののキャラクター面は主に子ども向けで、狐や般若などの民芸面は近年、外国からの旅行者向けにも売られています。イベント用品店の商品説明でも、キャラクター面の対象は「3歳以上」です。

子どもの顔は、大人より一回り小さいだけでなく、瞳の間隔も狭いので、目の穴は大人の瞳の位置より内側にあります。子ども向けの面を大人がかぶると、顎が出るうえに、目の穴が内側に寄って見えにくい。この二つが、屋台の面を「小さい」と感じる正体です。

とはいえ、屋台の面が大人に使えないわけではありません。頭の横や斜め上に掛ける着け方なら、顔の寸法は関係ありません。顔に着けて視界を確保したい場面にだけ、大人用の寸法が要ります。

面は、顔に合わせて作られていない

寸法の目安があっても、ぴったりの面はまず見つかりません。数字を見れば分かるとおり、顔の縦横は人によって1〜2cm違い、瞳の間隔も1cm近く違います。それに対して面は、一つの寸法で作られています。

演劇の世界では、面を着けることを「顔を面に合わせる」と言います。面を眼鏡のように自分の顔に合わせるのではなく、着ける側が面に合わせていく、という考え方です。店でも大人の方から「目の穴が合わない」と相談されることが多いのですが、目の穴に顔を合わせようとすると、面はたいてい浮きます。

合わせ方の基本は三つです。

  • 額と顎の2点で支える:面の内側の上の方を額に、下の方を顎に当てます。鼻や頬で面を支えません。
  • すき間はスポンジで埋める:額や顎が面に届かないときは、届かない側の内側にスポンジを貼って当たりを作ります。面と顔の形の差は、紐ではなくスポンジで吸収します。
  • 紐は押さえるだけ:紐の役目は、額と顎に面を押さえておくことです。きつく締めて密着させようとすると、鼻の一点に力が集まって痛くなり、しかもすき間は消えません。

大人が子ども寸法の面を使うときも、考え方は同じです。縦が足りない面は、額にスポンジを厚めに入れて面を少し上に据えると、顎の出方が目立たなくなります。目の穴の位置は、面の高さと顔からの距離で動くので、スポンジの厚みで調整します。それでも片目しか見えない面は、顔に着ける時間を短くして、歩くときは頭の横へ回します。手順そのものは「狐面の付け方」の記事に書きましたので、ここでは繰り返しません。

紐を通す穴が見える能面の裏側
能面の裏側。左右の縁にある穴に紐を通します。紐は面を押さえておくだけにして、きつく締めません。

紐と額当ての調整

大人の頭に合わせるとき、面本体より先に手を入れたいのが紐です。屋台の面に付いている細いゴム紐は、子どもの頭囲を基準に長さが決まっています。頭囲は青年男性の平均で約57.6cm、女性で約55cmです。ゴムが短いと面を顔に引きつけすぎるので、まず長さを足すか、平たい紐に替えます。

手本になるのは能の面紐です。能楽の用語事典によれば、面紐はしっかり結べてゆるみのこない絹の丸組みで、片方の端の小さな輪を面のこめかみの紐穴に通し、もう片方をその輪に通して面に固定します。狂言の「狐」のように激しく動く役では、2組の面紐を使うこともあります。市販の面に絹の組紐まで使う必要はありませんが、「ゆるまず、しかし締め付けない」という条件は同じです。

  1. 紐は、後頭部のいちばん出っ張ったところの少し上を通る長さにします。ここより下で結ぶと、面が下を向いてずれます。
  2. 額の当たりが弱いときは、面の内側の額の位置にスポンジを貼ります。これが額当てです。厚みは5mmほどから試し、面が前に浮かない範囲で足します。
  3. 顎が面に届かないときは、顎の位置にも同じようにスポンジを足してください。額だけ厚くすると、面の下側が前に開くからです。
  4. 眼鏡をかけたまま着けるなら、面の内側の鼻の付け根にあたる部分を眼鏡のブリッジが通る分だけ空け、額当てを厚くして面を顔から離します。
  5. 首を左右に振って、額と顎の当たりが動かないか確かめてください。動くなら、足りないのは紐の強さではなく、スポンジの厚みです。

スポンジは、はがせる両面テープで留めておくと、別の人が使うときに付け替えられます。汗をかいた日は、内側を拭いて乾かしてからしまってください。

大人のお面は、どこで買うか

最後に、大人用の寸法の面がどこで手に入るかです。売り場によって、面の寸法の考え方が違います。

売り場 主な面 寸法の考え方
お祭り用品の問屋、イベント用品店 樹脂製のキャラクター面、狐、鬼、ひょっとこ 子ども基準。商品説明に縦横の寸法が書かれているので、横15cm以上を選ぶ
郷土玩具や民芸品の店 張り子の面、木彫りの面 産地ごとの型で決まる。飾る用途の面も多く、紐穴の有無を確かめる
能面や狂言面を扱う店、面打ちの工房 能面、狂言面 舞台の寸法。顔より少し小さく、顎が出るのが前提
仮面の専門店 作家の一点物、狐面、紙工作の面 作り手ごとに違う。試着できる店なら、額と顎の当たりを確かめて選べる

通信販売で選ぶときは、縦横の寸法に加えて、紐穴の位置と目の穴の間隔が分かる写真を探してください。寸法が書かれていない面は、顔に着ける前提で作られていないことがあります。試着できる店なら、鏡の前で額と顎に面を当てて、どちらが浮くかを見るだけで、必要なスポンジの量まで分かります。

よくある質問

お祭りの屋台のお面を、大人がかぶってもいいですか?

かまいません。ただし屋台の面は子ども基準の寸法なので、顔に着けると顎が出て、目の穴も内側に寄ります。顔に着けるなら額にスポンジを足して面を少し上に据え、歩くときは頭の横や斜め上に掛けると、寸法の差が気になりません。

自分の顔のサイズは、どう測ればいいですか?

必要なのは三つです。髪の生え際から顎の先までの長さ、頬骨のいちばん張ったところの幅、右の瞳と左の瞳の間隔です。定規を顔に当てて鏡で読むか、顔の正面写真に定規を写し込んで測ります。瞳の間隔は、鏡に近づきすぎると目が内側に寄って短く出るので、腕を伸ばした距離で測ります。

眼鏡をかけたまま、お面を着けられますか?

面の内側に眼鏡が収まる奥行きがあれば、着けられないことはありません。額当てを厚くして面を顔から離し、鼻の付け根にブリッジが通る空間を作るのがコツです。奥行きの浅い面や半面は、眼鏡を外して着けるか、頭の横に掛けるのが現実的です。

子どもと大人で、同じお面を使い回せますか?

頭の横や斜め上に掛ける使い方なら使い回せます。顔に着ける場合は、紐の長さとスポンジの厚みを人ごとに変える必要があるので、スポンジははがせる両面テープで留め、紐は結び直せるものにしておくと、交換に手間がかかりません。

仮面屋おもての店内

仮面屋おもてで実物を見る

店頭でいちばんよく手に取られるのが狐面です。店頭の面はすべて試着でき、着けたまま写真を撮っていただいても構いません。

  • 場所 東京都墨田区京島3-20-5(キラキラ橘商店街)/京成曳舟駅から徒歩(道順)
  • 営業 土日のみ 13:00〜18:00
  • 通販 遠方の方は国内向けオンラインストアから

参考にした資料