スチームパンク
Tom Banwell
▼Banwell Designの成り立ち
Tom Banwell(トム・バンウェル)は、1970年代には既に独学で得た革細工や樹脂加工の技術を生かして帽子やトロフィーを作るアーティストでした。しかし、彼が成功と評価を得たのは、2008年ごろ、60歳になってからのことでした。それは、スチームパンクというレトロで未来的なファンタジーの世界との出会いがきっかけでした。
スチームパンクとは、19世紀末のSFに根ざしたカルチャーで、ヴィクトリア朝や旧西欧時代のファッションに終末論を織り交ぜた、蒸気機関の発達した世界観、それらを表す衣装や機械類で知られる独自のサブカルチャーです。彼の作品は、数多くのテレビ番組(『スモールヴィル』、『ワンス・アポン・タイム』、『ワンダーランド』など)、映画(インディーズ映画『アフター・ザ・フォール』)で使用されたり、国際的なアートショーで紹介されています。今でこそスチームパンクのイメージが強いバンウェルですが、マスクを作り始める前はスチームパンクの存在すら知りませんでした。
バンウェルはひょんなことからインターネットでマスクを作る人たちを見つけ、自分でもマスクを作ってみようと思い、ブルドッグの革製マスクを作りました。それをインターネットに投稿したところ、瞬く間に評判になりました。
他のマスクメーカーの作品を見ているうちに、自分の作品を「スチームパンク」という言葉で表現しているアーティストがいることに気づき、その言葉を知らなかったのでグーグルで調べてみたのだといいます。その幸福な出会いにより、彼の活動はスチームパンクの代名詞となるまでになりました。
▼ペストマスク
彼の活動の中でも一際目を引くのがペスト医師(17世紀から18世紀ごろ実在したとされるペスト治療の専門医師)のマスクです。博物館に収蔵されている実際のマスクを参考に、独自の解釈を加えて作られた作品は現代において唯一無二のアートピースとなりました。
残念なことに、現在、世間に流通している安価なペストマスクのほとんどが彼のデザインを不当にコピーした海賊版です。しかし裏を返せば、ペストマスクとトム・バンウェルがイコールで結びつけられてしまうほど、優れたデザインを生み出したのだともいえます。
▼日本での展開
仮面屋おもて(ブランド名:FACEMAN)は現在、日本唯一のBanwell Designの販売店であり、工房から直送した純正品のみを扱っておりますので安心してお求めください。卸取引のご相談なども引き受けております。
世界的な評価を受けた高品質のハンドメイド作品をぜひ体感してください。
▼引退とブランドの進化
2021年から、トム・バンウェルは事実上引退し、現在全ての製作は息子のErin(エリン)が引き継いで行っています。エリンは既に布製のマスクアーティストを束ねるデザイナーでしたが、父の作品を引き継ぐだけにとどまらず、自分自身でも精力的に作品を制作しようと奮闘しています。